<!--5-->恋の橋めぐりの物語

溢れ出す温かいお湯 縁を繋ぐ恋の橋

「五つの橋 温かく溢れ出す僕の想い出」(ラスト)


 お話には続きがあって、その後困難を乗り越え夫婦となった二人は、
なかなか子宝に恵まれなかったが、指月殿のお伺い石や、日枝神社の夫婦杉に
お参りしたおかげで、二男、二女に恵まれてそれはそれは、
幸せに暮らしたそうだ。
毎日毎日 独鈷の湯で手を清め、5つの橋を巡り
修禅寺、日枝神社、指月殿へのお参りも欠かさなかったんだって
そのおかげでお前がいるんだから、感謝しなさい。
ってよく言ってたっけ

 これがひいじいちゃんから聞いた昔々のご先祖様のお話。

 何処から何処までが本当だか、つじつまが合わないんじゃないか?
って今なら突っ込みどころ満載な話だけど
ひいじいちゃんは僕を膝の上に抱っこして、幸せそうに話してくれた。
この季節になると必ずこのお話をしてくれたひいじいちゃんも
もういなくなっちゃったけど
この音を聞くと思い出す
墓参り行こうかな・・・

 ちゃり~ん♪チン♪ドン♪ ちゃり~ん♪チン♪ドン♪
今年も賑やかにお弘法さんが行われている。
ひいじいちゃんの話が本当かウソかはともかく、まずはお祭りに行かなくっちゃ
リンゴ飴がなくなっちゃう
いっそげ~!!



 弘法大師様そしてその恩恵を受けた修善寺温泉
この街を守り子孫代々受け継がれていく温かい心

みそめ、あこがれ、むすばれ、よりそい、やすらぎ

修善寺温泉の五つの橋であなたのストーリーを作ってみてはいかがですか?

おわり

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溢れ出す温かいお湯 縁を繋ぐ恋の橋

「五つの橋 温かく溢れ出す僕の想い出」(その6)

 季節はすっかり色づいていた。
父の死の罪悪感から閉ざされていた心
頑なだった気持ち
そんな気持ちもあの娘に会っただけで 自然と溶かされていった。

 日々の生活の中にあの娘と過ごす時間が増え、 日に日に募るこの思い
父の身体を流しているときに会った虎渓橋 
父の介護を褒めてくれた渡月荘
あの運命的な出会いは全て父が繋いでくれた縁かもしれない。
父が僕とあの娘を繋いでくれたのかもしれない。

 都合がよすぎるぞと叱られるかもしれない。
でも この溢れ出しそうなこの思いを止める方法がわからない。

 僕は走り出した。
修禅寺、日枝神社、滝下橋、嵐山、鹿山、指月殿、夢中で走った。
虎渓橋、独鈷の湯、赤蛙公園、滝下橋、どこかにいるはずだ。
楓橋まで来たとき見つけたあの娘、あの娘は桂橋の欄干に寄りかかり
川に向かって手を伸ばしていた。

 はあはあ と息を切りながら 桂橋につくと
あの娘は 赤くなった紅葉の葉っぱを川に流していた。
紅葉の赤と橋の赤、そしてあの娘の真っ赤な唇
キラキラと光る川が反射して
そこだけ浮かび上がっているように見えた。

 僕は迷わずあの娘の元へ近寄り その小さな手を掴むと
「生涯を僕と共に過ごしてください。僕があなたを幸せにします。」
想いが声に伝わって 大声で叫んでいた。

 あの娘は大きな目を更に大きく見開き、涙声で言った。
「ありがとうございます。」


~~~ 僕たちは帰り道指月殿を目指して歩いた。
   階段を登り切り、お伺い石の元へ近づいた。
   あの娘の小さな手に重なれるように手を添えて
   こう心に想う
     「言葉にしなくても伝わるこの想いを君と一緒に一生繋いでいこう ふたりで」

つづく
   
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溢れ出す温かいお湯 縁を繋ぐ恋の橋

「五つの橋 温かく溢れ出す僕の想い出」(その5)


 じりじりと太陽が照りつける。
体中から汗が噴き出て 屈んだ頭からぽたぽたと汗が落ちる
こんな暑い日は作業も楽じゃないな と体を起こし顔を上げると
そこには透き通った白い肌に漆黒の長い髪のあの娘がたっていた。

「どう?元気でた?」
「あっこの質問はへんか」
「毎日 暑いね」
「なんか 久しぶりだね」
僕が何も言えずにいると
「も~ 今日の夜 楓橋集合!!」
と言い残し走って行ってしまった。
僕はただその後ろ姿を見つめていた。

 夕飯を食って河原の温泉に入る
体が温まって視界がクリアになってくる。
(月がきれいだな)・・・
ん?月を見たのはどれくらいぶりだろう
いや 月は出ていたんだ ただ僕の目に映っていなかっただけなんだ。
僕は、僕の世界は父の死から モノクロだったんだ。
今日あの娘に会って 色が 色が戻ってきたんだ。
そう思うと急いで着替え、楓橋に向かう。
今日はあの娘の方が先にいた。

 「遅いよ 遅い 冷めちゃうでしょ」
と僕にサツマイモを渡す。
「さあ 食べよ」
橋に寄りかかりながら サツマイモを一緒に食べる
夏の夜の川はさらさらと流れ、きれいな月を際立たせている。
その日は夜が深くなるまで、二人でより添いながら
夏の景色に見とれていた。

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溢れ出す温かいお湯 縁を繋ぐ恋の橋

「五つの橋 温かく溢れ出す僕の想い出」 (その4)

 あの日から 僕らは何度も赤蛙公園に通った。
蛍は光が苦手で、満月の日などは葉っぱの下に隠れてしまい
出てこないんだと あの娘は教えてくれた。
「誰かさんに似て照れ屋さんなのかな」という。
他にも日々あったこと、いろいろなことを話したんだ。
僕も少しづつ 話したんだ 自分の事、父の事、救世主弘法大師様の事
あの娘の事を知る時間がとても楽しかった。

 浮かれていた。
そう僕は浮かれていたんだ。
だから罰が当たったんだ。
ある日あの娘と別れ、家に帰ると
土間で父が血を吐いて倒れていた。
父を必死で背負い・・・病院まで必死に走った。
必死に走ったんだ。

 朝から晩まで仕事をし、
修禅寺の裏山の父の墓にお参りをする。

 この前まで 父の食事を作り、父の身体を洗い、
父の介護をしていた。
その父がいない。
ぽっかりと空いてしまった心
そして罪悪感
あの娘と話し込んでつい遅くなってしまった日に
父は血を吐いて 亡くなった。
あの日 僕が家にいれば、もう少し早く帰ってくれば、
後悔の思いが次々と押し寄せてくる。
 あの娘が悪いわけじゃないのに、会うのを避けてしまう。
ごめんなさい。ごめんなさい。心の中の罪悪感が消えない。

つづく

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溢れ出す温かいお湯 縁を繋ぐ恋の橋

「五つの橋 温かく溢れ出す僕の想い出」(その3)


 渡月橋であの娘に会ってから、街で、独鈷の湯で いろんなところであの娘と目が合う。
あの娘は大きく手を振ってくれるけど
僕はぺこっと小さく会釈するので精一杯

 そんなある日・・・いつものように修禅寺にお参りして帰ろうとすると
山門の下であの娘が立っていた。
会釈して通り過ぎようとすると
「ね ほたる ほたる見に行かない?」
「知ってる?とっておきの場所があるんだよ」
「行こうよ ねっ」
僕が答えられずにいると
「ねっ今晩 滝下橋に集合!! ねっ」
と言いいながら いつものように軽やかに虎渓橋を渡っていった。

 えっ なんで?なんで?・・・からかわれているのか?
そうだよな そうに決まってる。
考えても考えても訳が分からない・・・のに
夜が深くなるにつれて、気持ちが落ち着かずに
気が付いた時には滝下橋の袂に立っていた。

 たったったっ と聞き覚えのあるリズムが聞こえる
音の方へ目を向けると
あの娘が僕の方へ駆け寄ってくる。
「こめんね 待たせちゃって」
「さあ さあ 行こう!! こっちこっち」
と僕の着物の袖を引っ張る
「赤蛙公園にね すごいんだよ~ ほたる びっくりするよ」
と歩きながら言うあの娘の後を付いていくと
真っ暗な中に ぽっぽっぽっ と 丸く黄色く光る蛍が
光っては消え 光っては消え いくつもいくつも舞っている

 幻想的な光景の前に二人とも声を失っていた。
けれども 退屈な静寂ではない。
心地よい この景色とこの静寂がとても心地よく 安らぐ・・・
時間(とき)が止まったらいいのに
僕はそう思っていた。


つづく

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